University Hospital Introduction
チーム医療とは、一人の患者さんに対して複数の
メディカルスタッフ(医療専門職)が連携して、治療や
ケア等に当たることです。
病院内には、さまざま職種のメディカルスタッフが働いて
います。例えば、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、栄養士、
臨床検査技師、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士、
言語聴覚士、視能訓練士、臨床工学技士、臨床心理士などの職種があります。ま
た、事務系職員の中にも、社会福祉士、精神保健福祉士、診療情報管理士、医療
情報技師といった専門資格を有するスタッフも増えてきています。さらに、医師の事
務作業等を補助する医療クラークの存在も近年注目されています。
当院では、複数の専門職種が「チーム」を形成して診療やケア等に当たっています。
以下に、代表的なものについて紹介いたします。
?医療安全管理室(医療安全対策チーム)
?感染対策/抗菌薬適正使用支援チーム
?栄養サポートチーム
?緩和ケアチーム
?呼吸ケアサポートチーム
?摂食嚥下サポートチーム
?AYA世代支援チーム
?造血細胞移植チーム
?その他のチーム医療
病院の機能として最も重要なことは、安全な医療が確実に実施されていることだと考えます。医療界では、過去に、患者誤認という大きな医療事故を経験したこともあり、現在、日本国内全ての病院で「患者安全の確保」は最大のミッションとなっています。
当院でも、(患者?検体?部位)誤認の防止対策を中心に、転倒?転落防止、医薬品の安全管理、医療機器等の安全使用、医療情報等の適正管理などに努めています。チーム構成員は、医師、看護師、薬剤師、臨床工学技士、臨床検査技師が中心になりますが、病院内で発生した多くの事例(インシデント?アクシデント)を収集?分析?検討することで、同様事例の再発防止に努めています。「To Err is Human (人は誰もが間違える)」は事実なのですが、システム(仕組み)の改善やコミュニケーションの強化といったNon-Technical Skillの向上や、レジリエンス?エンジニアリングの応用などから医療事故を極力減らす対応策に日々努めています。
人や環境の表面には多くの微生物が存在し、一部の病原性のある微生物(病原体)が採血や処置などを通じて感染伝播することもあります。病院内には抵抗力の弱い患者さんが数多くいますので、感染防止対策は医療安全対策と同様に、本院における重大な責務と考えています。本院では、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、事務職員を中心にICT(感染対策チーム:Infection Control Team)とAST(抗菌薬適正使用支援チーム:Antimicrobial Stewardship Team)を構築し、病院内での定期的なラウンド活動のほか、抗菌薬適正使用支援、地域の医療機関や福祉施設との情報交換や支援活動などを行っています。
さまざまな疾患を有する患者さんにとって「食事は治療」の一環であり、医薬品治療と並行して適切な栄養管理がなされるべきと考えます。当院の栄養サポートチーム(Nutrition Support Team:NST)では、いろいろな職種(医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師、言語聴覚士等)がチームとなって、主治医と共に入院患者の栄養管理を行っています。栄養状態の評価や判定、最適な栄養管理の提案を行いながら経過を確認し、栄養状態の維持や改善に努めています。そのほか、定期的に勉強会?研修会を開催し、院内外医療従事者のスキルアップを図っています。
褥瘡(じょくそう)は、ベッド上で安静中の患者さんなどが、同一体位による体幹の圧迫や摩擦等によって発症する「傷」のことです。また、その発生には、機械的な刺激のほか、患者さんの低栄養状態が関与することも知られています。本院では、医師(皮膚科、形成外科、リハビリテーション科)と皮膚?排泄ケア認定看護師、看護師長、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、臨床検査技師、医事課がチームとなり、各病棟の医師?看護師とも協働して、新規褥瘡の発生予防ならびに専門的治療に当たっています。
日本人の2人に1人が罹患するとされる「がん」疾患に対しては、手術療法や化学療法、放射線治療だけでなく、診断時からの緩和ケアが重要だとされています。緩和ケアとは、痛み、倦怠感などの身体的な症状や、落ち込み、悲しみなどの精神的な苦痛をやわらげるためのケアです。当院の緩和ケアチーム(PCT: Palliative Care Team)は、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、臨床心理士、MSW (Medical Social Worker)、リハビリ療法士によって構成されています。病院として「ホスピス病棟」は有していませんが、各診療科から依頼を受けた患者さんへのラウンド対応や助言等による支援活動を展開し、患者さんやご家族が、がん治療に専念できるようサポートしていきます。また、がんではない患者さんの精神的なサポートも併せて行っています。
病気や怪我などで呼吸状態が悪化したときは、人工的な呼吸器管理を必要とすることが少なくありません。本院では多くの場合、集中治療部門(集中治療室:ICU や高度治療室:HCU)での呼吸器管理を行っていますが、一般の病棟においても呼吸器管理を行う患者さんがいます。患者さんが安全な呼吸器管理を受けられるよう、麻酔科医、呼吸器内科医、看護師、臨床工学技士、理学療法士で構成された呼吸ケアサポートチーム(RST: Respiratory Support Team)が定期的にベッドサイドでの呼吸状態の確認やケアを行っています。また、呼吸器管理やケアに関する研修会や相談対応を通して、院内職員の知識?技術の向上を目指した教育活動も行っています。
様々な疾患や加齢によって口や喉の機能が低下し、口から食べることができなくなることを摂食嚥下(せっしょくえんげ)障害と言います。摂食嚥下障害は窒息や誤嚥性肺炎、低栄養など生命の危険に直接結びつくばかりか、「食べる喜び」という人間の基本的な欲求にも大きく影響します。
本院の摂食嚥下サポートチーム(SST:Swallowing Support Team)は、医師(リハビリテーション科、耳鼻咽喉科、脳神経外科、歯科口腔外科)、言語聴覚士、認定看護師、管理栄養士、薬剤師、歯科衛生士、理学療法士、作業療法士で構成されています。チーム活動では嚥下造影などの検査結果や栄養状態、食事摂取状況、口腔内の衛生状態、内服薬の影響など、多面的な視点で「口から食べる」ために必要なことをチェック?評価し、患者さんの安全な食事摂取や摂食機能の回復を目指して、多職種で連携して介入しています。
私たちAYA世代支援チームは、AYA世代(AYA=思春期?若年成人、15歳?40歳までの年齢:( Adolescents and Young adults))のがん患者さんに特化したサポートを提供しています。この世代は、学業、就職、恋愛、結婚、出産など、様々なライフイベントが集中する時期です。同世代の人たちが学校生活や就職活動に励み、恋愛や友人との付き合いを楽しむ中、病気になったことで、将来に対する不安や孤独を感じている人も少なくありません。また、その後も病気やその治療によって発症時とは異なる様々な悩みや不安が患者さん一人ひとりに生じている現状もあります。以下のような悩みを感じていらっしゃる方もおられるのではないでしょうか。
?高校を留年せずに通えるかどうか
?病気になったあとも仕事ができるかどうか
?子どもをもてるかどうか
?治療にかかる費用をどのようにすればよいか
?親との関係をどうしたらよいか
?交際相手に病気のことをどう説明するか
?自分の子どもに病気のことをどう説明するか など
私たちAYA世代支援チームは、多職種で構成されたチームです。AYA世代の皆さんが持つ悩みや不安に寄り添います。一人ひとりに合わせてその時期に特に必要なサポート提 供できるよう体制を整えて、相談や支援を行います。悩みや不安のある方はAYA世代支援チームへお気軽にご相談ください。
(2次元コード)
本院での同種造血幹細胞移植治療は、子どもから大人まで幅広い年代の方を対象に、小児科と血液内科が診療科の垣根を越えて連携して移植治療を行っているのが特徴です。
移植治療では、患者さんが病気と向き合う中で、生活スタイルの変化などに加え、様々な副作用や合併症が出現することがあります。そして、移植ドナー(造血幹細胞の提供者)の決定までの間にも、患者さんやご家族が戸惑いや不安を感じることが多くあります。私たち造血細胞移植チームは、小児科?血液内科の医師?看護師、薬剤師、リハビリテーション科医師や療法士、管理栄養士、歯科口腔外科医師?歯科衛生士、精神科医師、緩和ケアチーム、臨床心理士、造血細胞移植コーディネーターなどから構成されています。この多職種のチームで定期的なカンファレンスを行い、患者さんの治療や支援などについてより良い方法を検討しています。
また、同種造血幹細胞移植で必要とされる移植ドナーについても、移植チームで情報を共有して検討し、その安全と権利を守るための調整を進めることを心がけています。そして、それぞれの専門的知識やそれらに基づいた意見を積極的に交換し、チーム一丸となってドナーの善意を生かした移植治療に取り組んでいくことを目標としています。
最後に、私たち移植チームでは、移植の可能性が出た時から、移植後の外来通院も含めて患者さんとご家族、移植ドナーの支援をしています。移植治療について分からないことや不安なこと、聞いてみたいことなどがありましたら、お気軽に造血細胞移植チームへご相談ください。
当院では、がん治療に対して、内科?外科?放射線科などの関係職員が集まって定期的カンファレンスを開催し、治療等の選択に難渋している症例の検討を行っています。また、複数の診療科が合同カンファレンスを実施する機会も多くなり、従前あった大学病院の専門診療科の壁を低くするように努めています。また、最近は、「肥満減量外科チーム」のように、種々の治療アプローチを、専門診療科が役割分担しながら対応する機会も増えてきました。